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あなたに贈るブーゲンビリア

作 まなおソーダ

Last Updated: 7/12/21

(♂♀2) 約15〜20分

 

モーガン・ムーア(♀♂)
葵(♀
♂)

モーガンと葵はそれぞれ別の人と話している設定です。

直接の掛け合いは終盤までありません。

​インタビューを受けている程で演じてください。

モーガン「出会い、ですか?」


 

葵「そうですね」


 

モーガン「あれは」


 

葵「確か、」


 

モーガン「すっごい晴れの日で、」


 

葵「曇りだった気がします。」


 

----------------------


 

モーガン「雲ひとつない晴れ空で、10月だったんですけど、真夏のように暖かくて。

     でも湿気が全くなくて、こう、カラッとした暑さ?っていうか

     太陽光が皮膚に直に当たってる感じ。

     で、もうみんな一斉に外に出てて、アイスパーラーも出てるから、

     子供づれの家族とかが行列になって、アイスを求めて並んでるんですよ。

     まあ、私は、週末も普通に働いてるので、

     他の人のように出かけたりはできなかったんですけど、

     エアコンつけて、まあ、店から、

     わーあったかそうだな〜って羨ましくみてました、はい。」


 

葵「すっごいジメジメしてました。

  私って、すっごい天候に気分左右されるんですよね。

  だから、この日も、朝起きて、外見たら、めっちゃ曇ってるんで、

  あ〜まじか〜って感じで、本当に出かけたくなかったんですけど、

  でも、学校あるし、結構単位もヤバくて、だから、

  よし、起きるか、みたいな、あまり乗り気じゃなかったですね。

  あ、でもいいこともありましたよ。

  そう、本屋があったんですよ。

  すごい、可愛らしい本屋があって、

  通学路で、毎日通ってるはずなのに、その日はじめてみたんですよ。

  でも別に、新しいって感じでもなくて、うん。

  結構年季が入ってる感じだったし、

  いや〜毎日通る道でも、気づかないことって結構あるんだな〜って

  その時、思いましたね〜」


 

モーガン「で、まあ外がこんなに晴れてるんで、

     この街の人って、晴れの時はもう一日中外にいるじゃないですか?

     ほぼ毎日曇ってるんで、もう晴れの日は特別みたいな?

     だから今日は客数少ないかな〜って思ってたら、

     意外と混んで。

     多分みんな、公園とかで、日向ぼっこする時に読む本を買いに来たんでしょうけど、

     ほとんどの人はおすすめコーナーで適当に一冊選んで、

     パパッと購入に進むんですけどね、

     あ、そう、でも、1人だけ、すっごいじっくりと本を選んでる人がいて、

     しかも、滅多に人がいかないマイナーな本のコーナーだったんですよ。

     うわ、珍しい〜って思ってみてたら、こっち振り向いて、

     目、合ったんです。」


 

葵「で、目があっちゃってるんで、背けるわけには行かないじゃないですか。

  普通に聞きたいこともあったし、

  だから、店員さんの方にいって、」


 

モーガン「『リチャード・ムーアって売ってますか?』って聞かれたんですよ」


 

葵「そしたら、なんとその作家が、

  店員さんのひいおじいさんらしくて。

  普通にびっくりしましたよね」


 

モーガン「『よかったらお見せしましょうか?』って言って、

     まあ、本棚の方に行ったんですけど、

     いや〜、まさかひいじいちゃんの本を求めてくる人がいるとは、

     思いもしなくて、

     そもそも、ひいじいちゃんってちゃんと名が知れてたんだっていうことの方がびっくりでした」


 

葵「『どれをお探しですか?』って聞かれたので、

  特にどれってのはないんですけど、

  【月が消えた日】だけ読んだことがあったので、

  他の執筆作品もあったら読んでみたいな〜って思ってて〜

  みたいな話して、」


 

モーガン「【月が消えた日】ですよ?

     ひいじいちゃんの処女作だし、当時結構叩かれてたらしくて、

     現代の若者が読む本のようには思えないんですけどね〜

     でしょ?

     しかも、私よりも絶対若いし、明らかに学生の格好してたし、

     後、外国人だったし?」


 

葵「『めっちゃ意外ですね』って言われました。

  まあイギリスでマイナーな本なのに、日本人が?!

  みたいな感じだったんでしょうね。

 

  はい。

 

  結局買った本?

  これです。」


 

モーガン「そう。【湿地に溺れて】

     これもまた意外ですよね。

     うん、ひいじいちゃんが晩年に書いた本なんですけど、」


 

葵「面白かったです。

  ムーアの人生を描いた本で、

  それはもう、戦時中から、息子が生まれて、孫も曽孫も生まれて、

  最後に、生涯愛していた奥さんが亡くなって、

  自分自身も死ぬまでの、

  一生を書いた、」


 

モーガン「読んだことないですよ〜。

     恥ずかしい話、ひいじいちゃんの本、一冊も読んだことないです。

     特に最後の【湿地に溺れて】なんて絶対読もうと思えない。

     だって自分も登場してるんですよ?

     なんて書かれてるか、わかったもんじゃないし」


 

葵「特に、曽孫が登場してからの部分がね、

  一番感動したし、泣いちゃいましたね。」


 

モーガン「絶対悪口しか書かれてないですもん」


 

葵「すごい愛が伝わってきて」


 

モーガン「別にひどい曽孫だったわけじゃないですけど、

     あまり、仲良いとは言い難いです」


 

葵「曽孫さんが生まれた瞬間の感動だったり、

  命の尊さや、曽孫さんがどう成長して欲しいとか、

  そういう願いも込められていて、

  すごい、優しい言葉ばかりでしたね」


 

モーガン「うん。

     まあ、いつかはね、読もうかなって思いますけどね。

     言われちゃったんっで。勧められちゃったんで?うん。

     そのいつかが、まだ、今じゃないってことですかね。」


 

葵「はい。勧めました。

  だってあんなに愛されてるんですよ?

  それを知らないってなんか、悲しくないですか?」


 

モーガン「説得されたっていうか、

     あの黒髪と奥まった黒い瞳にね、

     見つめられちゃったら、

     流石に断れないですよ〜」


 

葵「読み終わってから、またお店に行って、勧めに行ったし、

  そこからちょくちょく、買いに行ってましたね。うん。

  だってあのコーナーがある本屋ってなかなかないんですよ」


 

モーガン「この近所の古本屋って言ったら、まあうちくらいでしたし〜。

     うん、それから、結構頻繁に会うようになりましたね」


 

葵「近くで見ると、すごい綺麗な顔してるんですよ。

  綺麗なジンジャーで」


 

モーガン「もう驚きまくりです、この人には。

     普通ジンジャーって嫌われる髪色じゃないですか?

     まあ嫌われないにしても、いじめられるじゃないですか?

     それを、綺麗って。」


 

葵「あと、目がターコイズじみてて、」


 

モーガン「うん、へへ」


 

葵「まあ本人に言えた試しはないんですけどね。

 

  え、付き合う?!

 

  できたわけないじゃないですか。

 

  モーガンは、みんなのものですよ」


 

モーガン「あ、はい。付き合ってました。

2、3年くらいかな。

別れた理由?」


 

葵「いろんな人がモーガンのこと好きで、

  だって顔がもうすでに、顔面国宝っていうか、

  ただただもう綺麗なんですよね」


 

モーガン「私に、魅力が足りなかったんでしょうね〜。

     うん。

 

     うん。」


 

葵「何回かモーガンと、モーガンの友達とかとも飲みに行ったんですけど、

  いつもモーガンは注目の的で、みんなの中心にいて、

  全員と仲がいいイメージでした」


 

モーガン「私の好きがこのくらいだとしたら、うーん、

     向こうの好きはこのくらいかな?

     だったような気がします」


 

葵「だから、まさか私がモーガンの特別になれるわけなんてね、なかったんですよ。」


 

モーガン「はい。あっけなく振られました。

     『私たちってどうゆう関係?』って聞いたら、

     『友達でしょ?』って。

     当たり前かのように。そう、まあその日は泣きましたね〜

     ああ、友達止まりか〜って」


 

葵「いや、友達以上になりたいなって思ったことはもちろんあるし、

  正直何回かあるし。

  付き合えたらどれだけ幸せだろうな〜って考えるなんてしょっちゅうでした」


 

モーガン「まあでも、気まずい感じにはならなかったんで、

     それはよかったですけどね、はい。」


 

葵「今、どうしてるかな〜」


 

モーガン「多分本でも読んで元気にやってると思いますよ。

     きっとそう。」


 

葵「え、

 

  殺された?」



 

(間)



 

モーガン「別れてからも、当然忘れることなんてできなくて、

     よく会ってましたけど、

     あ、もちろん友達としてね。

     でも、まだ好き、だったんだろうな〜」


 

葵「そう、ですか…」


 

モーガン「そうそう!

     その別れた年の冬に友達数人で、スキー旅行に行ったんですよ

     アルプスの方に。

 

    (思い出し笑い)

 

     すごい面白くて、

     はじめて、スノボーに挑戦したんですね。

     で、あいつスケボーできるのに、雪の上になるとヘッタクソで、

     コロコロコロコロ、転がってて、

     もう、漫画でしか見ないような雪だるまみたいになって、

     こんなことって本当に起きることあるんだな〜って

 

    (笑いが止まらなくなる)

 

     あはは、あ、すみません、

     なんか思い出したら笑いとまらなくなってきちゃった。」


 

葵「その日は、」


 

モーガン「その冬一番寒い夜で、

 

     へへっ、

 

     あの〜」


 

葵「ホットチョコレートを」


 

モーガン「くれたんですよ。

     で、2人で毛布にくるまって、

     ホコアを飲みながら、映画をね、みたという」


 

葵「あったかかったです。」


 

モーガン「いましたよ。

     団体でロッジみたいなのを借りて泊まってたんで。

     でも、その時だけは、なんか、

     2人の空間、のような感じでしたね。

     あ〜やっぱりまだ好きなんだな〜って自覚しました。

     まあ、向こうは全くその気じゃないでしょうけど?

     残念ながら、あはは」


 

葵「ああ、うん、はい。

  確かに、そういうことありましたけど、」


 

モーガン「ええ〜もう惚気話みたいになっちゃうんですけど〜

     くるまってるって言ったじゃないですか〜

     それで、なんか、いつの間にかあいつ寝ちゃってて、

     こう肩に、頭をね、こうコトンって、寄り掛かってきて

     なんだこの可愛い生き物は!って、ふふ

 

     はい。幸せでした。」


 

葵「あまり、よく覚えてないです。

 

  すごい寒かったっていうのと、

  あたりがもう真っ白だったってことくらいですかね」


 

モーガン「真っ白いキャンバスよりも、真っ白でした。」


 

葵「あ、そうだ、多分熱っぽかったんですよその時。

 

  ほら、気候に左右されるって言ったじゃないですか?

  体調面もそうで、寒暖差ですぐに体調やられちゃうんですよね。

  だからその日もだいぶぼーっとしてて」


 

モーガン「『大丈夫、大丈夫』しか言わなくて、

     明らかに風邪ひいてるでしょ!休みな!って言っても、

     『一緒にいたい』とかいうから、

     殺すきか!!ってはは」


 

葵「そんなこと言ったかな〜?

  だからそんなに覚えてないんですって」


 

モーガン「めっちゃ可愛いです。

     みます?写真。

 

     遠慮しなくてもいいですよ、ほら!」


 

葵「写真、あったかな〜?」


 

モーガン「ほら、可愛いでしょ?」


 

葵「あ、あった。これとか?」


 

モーガン「私の宝物です。」


 

葵「もしかして私、疑われてるんですか?」


 

モーガン「どの瞬間を切り取っても、

     一番可愛い気がします。

     はい。ベタ惚れですよ。」


 

葵「(深呼吸)

  わかりました、じゃあ話します。」


 

モーガン「すいません、余計なこと話しすぎましたね。」


 

葵「あれは、クリスマスマーケットに行った日で、

 

  いえ、モーガンの友達もいました。

  だから言ったじゃないですか、

  私はモーガンと2人きりになれるような人じゃないんですよ。

  そんなに肝座ってないです。

 

  ホットワインとか、ホットチョコレートとか買って、

  後、射的もしたかな。

 

  楽しかったんですけど、

  その日なんかすごい周りを気にしてて、

 

  わかんないです。

 

  すごいソワソワしてて、どうしたの?って聞いても、

  なんでもないの一点張りで、

  だからまあ、心配でしたけど、その日は普通に夜まで遊びました。」


 

モーガン「あ、そうだ何か飲みます?」


 

葵「好きなお茶…?

 

  無難にアールグレイ。」


 

モーガン「はーい、今淹れてきますね〜」


 

葵「それとなんの関係があるんですか?」


 

モーガン「はい、どうぞ」


 

葵「私はモーガンのことが好きでした。

  本屋ではじめて見かけてから、一目惚れで、

  そりゃあ、気持ちを伝えることはできませんでしたけど、

  私は、モーガンの幸せしか願ってません。

  今も、昔も。」


 

モーガン「でもびっくりです、

     あなたが訪ねてくるなんて」


 

葵「だから、私にできることがあったら、

  なんでも話ますし、

  なんでもします。」


 

モーガン「まさか記者さんになってるとは、」


 

葵「モーガンはストーカー被害に会ってました。」


 

モーガン「あ、これ?」


 

葵「よく脅迫状ももらってました」


 

モーガン「綺麗でしょう?

     宛先不明なんですけど、

     結構しょっちゅう贈られてくるんですよね〜

     花言葉も素敵なんですよ、

     『あなたは魅力に満ちている』とか

     『情熱』とか。

 

     『あなたしか見えない』、とか。」


 

葵「困ってる様子でした。

  色々と贈り物とかももらっていたそうで、

  でも、どれも宛先不明。

  それを『捨てたら殺す』とか、

  『愛してるよ』とかいうメッセージ付きで、

  うん、普通に怖いですよね」


 

モーガン「ははっ、でもどれも素敵なんで、

     こう飾っていますけど、

     いつか、お礼できたらいいんですけどね〜」


 

葵「え、ああ、はい。

  もちろん、相談されてましたよ。

  あまり頼もしい言葉はかけられませんでしたけど、

  うん。

 

  だいぶ、抱え込んでたのかな。

  もっと他に何か言えてたらよかったんですけどね」


 

モーガン「(誤魔化し笑い)ふふふふっ」


 

葵「多分、そのストーカーが犯人だと思います。

  これって聞いていいのかな?

  どこで殺されたんですか?」


 

モーガン「そう、ですね。

     私を基にしました。

     私の経験とか?あいつとの思い出とか。

 

     もちろん最後は経験じゃないですよ。

     むしろ絶対に起こって欲しくないことです、当たり前ですけど。」


 

葵「…」


 

モーガン「ええ?

     ジンクスって、そんなの信じませんよ。」


 

葵「…」


 

モーガン「はい、わかりました。

 

     私、モーガン・ムーアの新しい小説

     『あなたに送るブーゲンビリア』は、

     本屋で出会った2人の純愛物語です。

 

     私の実際の、経験談を元に書かれたこの物語は、

     終盤にかけて思いもかけない展開が広がっていきます。

     ぜひ、最後まで読んでください。」


 

葵「家の、」


 

モーガン「あ、どうぞどうぞ。

     そこを曲がって右のドアです。はい。」


 

葵「トイレ」


 

モーガン「結構長い間いますけど、大丈夫ですか?

     どこか具合でも?」


 

葵「絞殺…」


 

モーガン「っ?!(首をしめられる)ぐっっっぁ!

     はぁっ、な、にをっ

     離、し、てっ…」


 

葵「ひどい…」


 

モーガン「あ、お、っい、さん…」


 

葵「早く、捕まって欲しいですね、その犯人。」




 

----------------------



 

モーガン「あ、葵さん!いらっしゃい!

     今日はどんな本が御所望で?」


 

葵「え、あ、あの…」


 

モーガン「あれ?よう!!

     今日は早いじゃん。もしかしてサボり?」


 

葵「あ」


 

モーガン「葵さん、紹介するね。私の恋人。

 

    (恋人に)あ、そうそう!葵さんね、あんたと同じでムーアファンなんだよ!

     意外でしょ〜?

     ひいじいちゃんも喜ぶよ〜」


 

葵「いえ、あの、書き方が、すごく好きで。」


 

モーガン「そうだ!おすすめだったらこいつに聞くといいよ!

     きっと2人気合うよ!

 

     じゃあ私ちょっと作業してくるわ。

     店番頼む!!」


 

葵「…

 

  え?

 

  あ、私、今日はもう帰ります。

 

   失礼します。」



 

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葵「(鼻歌)

 

   ふぅ〜あなたしか、見えない。」

​【終】

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