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Imprisonment

作 まなおソーダ

Last Updated: 27/10/21

(♂1:♀1) 約40分

 

サラ(♀)
トム(♂)

トムの人格達

チャーリー(チャ):11歳の子供

ママ:母親

ドクター(ドク):博士的な存在

リリアン(リリ):16歳のJK

ケビン(ケビ):最低男

ダニー(ダニ):大人しい人格

[檻の中。腐った卵みたいな汚臭が漂う。]

[監禁されているサラは地面を彫り、日数を数えている。]

サラ 「(地面を彫っている)っ!!っっ!!」

 

サラM 「監禁されてから今日でちょうど2週間。

この薄暗さと汚臭にも大分慣れてきてしまった。

12月29日。明日って私の誕生日じゃない。

こんなところで誕生日とか最悪ね。」


 

[トム、トーストをのせた皿を持って檻に近く]


 

ママ 「おはようバニー。よく寝れた?」

 

サラ 「…」

 

ママ 「今日も口を聞いてくれないの?いいかげん機嫌をなおしてちょうだい。

大好きだったテディを近所の子にあげちゃったのは悪かったと思ってるけど、

あなたももう大きくなったんだし、もうちょっと大人になってもいいんじゃない?」

 

サラ 「…」

 

ママ 「はぁ〜。いつまでもそう膨れてないで、家の家事くらい手伝ってよね。

トースト、置いとくわよ。」

 

[トム退場。サラ、トーストをとって食べる]

 

サラ「(食べながら)味、わかんなくなってきたな…」



 

[過去振り返り。12月15日。]

 

サラN 「あいつと初めて会ったのは2週間前。

友達のエマのハウスパーティー。

エマは顔が広く、パーティーには知らない人がたくさんいて、

その中にあいつもいたのだ。」


 

トム 「こういう場所、あんまり慣れてないんですよね。」

 

サラ 「え?」

 

トム 「あ、突然話しかけてすみません。トムっていいます。

 

サラ 「あ、どうも。サラです。私も、あまり得意じゃなくて…(笑)」

 

トム 「サラさんもこういうの苦手ですか?」

 

サラ 「そうですね〜、ワイワイも楽しいですけど、流石にこの人数は疲れますw」

トム 「ですよね〜。僕も人混みとかダメで、

友達に誘われて来たんですけど、少し後悔してて(笑)」

 

サラ 「私もです。主催のエマが高校からの友達で。

是非来てくれってせがまれたから来たのに、

とうの本人はとっくのとうに酔っていい気分になってるし。

あーあ、帰ろっかなー。

どうせまたこうやって私のこと置いてきぼりにするんですよ、エマって人は。

私があまり飲まないのをいいことに、

エマが潰れたときの介抱役として私を呼んだんですよ、きっと」

 

トム 「(笑う)じゃあサラさんもいい気分になりましょうよ。」

 

サラ 「え?」

 

トム 「ほら、コップ、空じゃないですか。飲み物取りに行きますよ。」

 

サラ 「あ、ちょ、トムさん!…ああもう!こうなったらとことん飲んでやる!」

 

[間]

 

トム 「酔っ払いにかんぱーい!」

 

サラ 「かんぱーい!

(一気飲み)

ぅぅう!やっぱまっず!

ウォッカショットってなんでこんなにまずいんでしょう。

ガチでハンドジェルじゃん!」

 

トム 「いやぁでもサラさんって結構お酒強いんですね!

これもう4回目のショットですよ?」

 

サラ 「『サラ』でいいですよ、「さん」付けなしで。

トムさんだって強いじゃないですか!」

 

トム 「じゃあ僕のことも「トム」だけでいいよ。

それじゃあ、どっちが先に潰れるか勝負するか!」

 

サラ 「いいね!かかってきなさいよ!」

 

[間]

 

トム 「サラ、サラ?大丈夫?」

 

サラ 「気持ち悪い…しんど…」

 

トム 「無理させたね、ごめん。全部吐き出せた?」

 

サラ 「うん。たくさん吐いた。ごめんね、汚い姿見せちゃって…」

 

トム 「いいよ、いいよ。それよりどうする?帰る?」

 

サラ 「うん…帰る…」

 

トム 「じゃあタクシーで家まで送るよ。住所だけ教えて?…サラ?サラ!」

 

サラM 「翌日、目が覚めたら檻の中にいた。

16ショット後の二日酔いは酷く、頭痛や胃もたれで体調は最悪。

檻の中は薄暗く、視界もぼやけていて、ただただ気持ち悪かった。

そして遠くから聞き覚えのある声が私の名前を呼んでいた。」

 

チャ 「サラ?サラ!あ、やっと起きた。」

 

サラ 「ト…ム…?」

 

チャ 「残念。僕はトムじゃないんだ。僕はチャーリー。11歳だよ。」

 

サラ 「…へ?」

 

チャ 「いやぁ、昨日トムがサラを担いで帰ってきた時はびっくりしたよ。

トムが人を家にいれるなんて滅多にないからさ。」

 

サラ 「ここは…どこ…?」

 

チャ 「トムの家だけど。」

 

サラ 「これ…檻?」

 

チャ 「あ、そうそう、君がどんな人かよくわかんないから一応檻に入れてるんだよね。

でも安心して、こっちから危害を加えようとは思ってないから。」

 

サラ 「何これ?え?出して!ここから出して!出してよ!!

 

チャ 「それは僕権限じゃないからできないや。

ドクター命令だからさ。ドクターしか鍵の場所知らないんだよね。」

 

サラ 「ドクターって?」

 

チャ 「ドクターはドクターだよ。

でもサラが来てくれて嬉しいや!

僕友達少ないからさ。サラが僕の話し相手になってよ!

 

サラ 「は?」

 

チャ 「おっと、もうこんな時間だ。

じゃあまたね!

サラ!今度はもっとゆっくりお話ししよう!


 

[トム退場]


 

サラM 「…何が…起こってるの…?誘拐?監禁?考えるのよサラ。

昨日はエマのパーティーに行って、トムに出会って、たくさん飲んで、っ!頭いたぁ…あ、そうだ携帯!っ、はないか…どうしよう…さっきの人、チャーリーって言ってた。トムじゃないって。でも見た目も声もトムにそっくりで……とにかくここから出なきゃっ!

鍵はドクター(?)が持ってるって言ってたけど…

 

[扉が開く音]

 

サラ 「っ!?!」

 

ドク 「やあ、サラさん。」

 

サラ 「チャーリー?チャーリーよね?トムはどこにいるの?!」

 

ドク 「チャーリー?ああ、あのガキともう話したのですね。

はじめましてサラ。私はドクターです。」

 

サラ 「え、どういうこと?」

 

ドク 「(ため息)面倒臭いので簡単に説明しますね。

私達は多重人格者なんです。

トムもチャーリーも人格の一つなんですよ。

その中でもトムは特別で、トムだけが外出することができる。

だからあなたが昨日会ったのも、トムってことです。」

 

サラ 「っ…」

 

ドク 「まあすぐに理解しろとは言いませんよ。

ところでどうです?体調の方は。随分と飲んだようですが。

二日酔いがひどいでしょう?

まあ少し生臭いですけど、ゆっくり休んでくださいね。」

 

サラ 「出して…」

 

ドク 「?」

 

サラ 「ここから出して!!出しなさいよ!!」

 

ドク 「乱暴な言動は困りますよ、サラさん。

あなたはトムの秘密を知ってしまったんです。

簡単に出すわけには行きません。」

 

サラ 「秘密?…知らない!!私はそんなの知らない!!いいから出して!!」

 

ドク 「はいはい、頑張って足掻いていてください。

いくら騒いだってあなたが自力でここから出ることは不可能なんです。

あ、それと、これを。」

 

サラ 「手紙?」

 

ドク 「トムの日記にあなた宛に書かれたメッセージがあったので。

とりあえず渡しておきます。」

 

サラ「『サラ、この間は無理をさせちゃってごめんなさい…」

 

トム 『タクシーに乗せたんだけど、サラは酔い潰れてたから住所を教えてくれなくて、

とりあえずうちに運びました。でも朝起きたらサラはいなかったから、先に家に出ちゃったのかな?連絡先交換してなかったし、とりあえず僕の電話番号をどうぞ。いつでもまた連絡してくれると嬉しいな。もっとサラとお話がしたい。じゃあまたね。トム。』

 

サラ 「…どうゆうこと?」

 

ドク 「まあ、多重人格といっても、お互いの記憶を共有してるわけじゃありません。

檻に入れたのは私です。だからトムはあなたがここにいることは知らないし、

もしトムと話したいというのなら平日の日中に電話をかけることをお勧めしますよ。」

 

サラ 「電話がないのだけれど。」

 

ドク 「そうでしたね。ではこれを。かけられる番号はトムのだけですがね。」

 

サラ 「あ、りがとう…」

 

ドク 「では私はこれで失礼します。」


 

[トム退場]


 

サラ 「(泣き出す)

なんで。なんでこんな目に…誰か助けて…もう意味がわからないよ…おかしいよこんなの…多重人格?は?ふざけんな…ここから出せよ…」



 

[翌朝。お皿がおかれる音]


 

サラ 「…ん…」

 

ママ 「あらバニー起きた?朝ごはん、ここにおいとくわね。」

 

サラ 「っ!誰?!」

 

ママ 「ちょっといきなり大声出さないでよ。

自分の母親を忘れるなんて、親不孝にも程があるわよ!」

 

サラ 「は?」

 

ママ 「全く、いつもいつもそうだらしないんだから。

立派な大人になれないわよ。

ほら早く支度をしなさい。学校、遅刻するわよ。」

 

サラ 「……」

 

[トム退場]

 

サラ 「パン…」

 

[トム入場]

 

リリ 「うわぁ、ガチで檻に入れてんだドクターのやつ。まるで犬ね。」

 

サラ 「今度は誰?!」

 

リリ 「あたし?あたしはリリアン。16歳。

パン用意してくれたのママでしょ?

ママってばあんたのこと自分の子だと思ってんのよ。ほんっとイカれてる(笑)

あ、そうそう、そのパンね消費期限2ヶ月前くらいだったから気をつけてね。」

 

サラ 「(吐き出して)ぐっふ、げふっ

 

リリ 「うげっ、きっしょ。マジ無理なんですけど。

まあいろいろ大変だと思うけど頑張ってね。

ドクターの狙いとか理解不能だけど、あんたに危害を加えるわけじゃなさそうだし。

じゃあね!」

 

サラ 「あ、まって!トっ…リ、リリアン!!」

 

リリ 「何?」

 

サラ 「…何人いるの?」

 

リリ 「何が?」

 

サラ 「…人格ってやつ。あと何人いるの?」

 

リリ 「あんたが誰にもう会ったかはわからないけど、全員で7人。

一番イカれてるのは…ま、いっか。

じゃ、もう時間だから、ばいばい。」

 

サラ 「あっ、ちょっ!!」

 

[間]


 

サラM 「考えるのよサラ。今知ってる限りではトム、チャーリー、ドクター、ママとリリアン。

残り二人。

誘拐サスペンススリラーものとかよく観てたじゃない。

主人公はどうやって逃げ出した?考えろ。思い出すのよ。

はっ!トム。

ドクターが言ってた。トムだけが外に行くことができる。

それはトムの人格の時でしか外出できないってこと。

私を檻に入れたのはドクターの勝手。

つまりトムはそのことを知らない?

トムに、トムに電話しなきゃ!」


 

トム 「もしもし?」

 

サラ 「もしもし、トム?」

 

トム 「はい、トムですが、どちら様で?」

 

サラ 「サラ、サラです!」

 

トム 「あ、サラ?連絡くれたんだ。ありがとう。」

 

サラ 「トムは今何してるの?」

 

トム 「仕事の休憩。」

 

サラ 「サボり?」

 

トム 「まあ、そうとも言う。」

 

サラ 「(笑う)」

 

トム 「サラ、なんか泣いてない?」

 

サラ 「え?」

 

トム 「大丈夫?何かあった?」

 

サラ 「え…あ…」

 

トム 「僕でよかったらなんでも聞くよ?」

 

サラ 「あ…うん…じゃあ、問題です。私は今どこにいるでしょうか?」

 

トム 「え?(笑)えーどこだろう?

大学、とか?

あ、もしかしてサラもサボりだったり!」

 

サラ 「…そうかも…うん…サボり。」

 

トム 「そっかー。同じだね!」

 

サラ 「…うん…」

 

トム 「そうだ!今度さ、二人でご飯に行こうよ。

いいお店知ってるんだよね」

 

サラ 「…そうだね…行きたいな…」

 

トム 「やっぱり元気ないよね、サラ。どうしたの?大丈夫?」

 

サラ 「…うん…大丈夫…心配してくれてありがとう。」

 

トム 「そう?ならいいんだけど…

あっ、上司に呼ばれちゃったから行かなきゃ!

また話せてよかった!空いてる日とかわかったらまた連絡して!

 

サラ 「うん。じゃあね。」

 

トム 「うん!サラも元気出してね!あ、はーい!今行きまーす!じゃあ、ばいばい!」


 


 

サラ 「はぁ。トム、本当になにも知らないのかな…どうしよう…どうすれば…」


 

[数時間後]


 

トム 「 ただいま!って誰もいないか…」


 

サラM 「 っ!あのトーンは…トム?!」


 

サラ 「 トム!トム!!わたしだよ!!サラだよ!!」


 

トム 「あれ、ドクター。なにか声がしない?」

 

ドク 「きっと気のせいですよ。トム。」

 

トム 「そっか。今日も疲れた〜。僕はもう休むから後のことお願い。」

 

ドク 「了解です。」

 

ケビ 「なあ、ドクター。俺が見に行ってもいいか?」

 

ドク 「ケビンですか。

あまり勝手な行動はさせたくないのですが、

いいでしょう。少しだけですよ」

 

ケビ 「うっしゃぁ!」

 

サラ 「 (怯える)

 

[ドアが開く音]

 

ケビ 「お前がサラか。」

 

サラ 「っ…」

 

ケビ 「俺様はケビンってんだ。やっぱキレイな顔してやがる。

さすがトムのお気に入りなだけあるぜ!」

 

サラ 「…「お気に入り」って?」

 

ケビ 「あ?そりゃあトムはお前のことをずっと前から…って

これは言っちゃいけなかったんだっけ。

あっぶねえ笑笑」

 

サラ 「え、ずっと前からってどうゆうこと?」

 

ケビ 「まあそんなことはいいや。お前、ヤらせろよ。」

 

サラ 「…は?」

 

ケビ 「ぐぇへっへ!」

 

サラ 「で、でも、残念ね!この檻の鍵の場所はドクターしか知らないんですって!」

 

ケビ 「そんなん、ここらへんに隠してあるよ!

ほら、あった。」

 

サラ 「 ひっ!」

 

[檻の扉が開く]

 

サラ 「いや、来ないで…」

 

ケビ 「存分に楽しませてもらうぜ!!」

 

サラ 「いやぁ!!来るな!!触んな!!!離せっ!!」

 

ケビ 「お前も欲しいんだろ?このビッチが!!!」

 

サラ 「いやっ!!いやぁああああああああっ!!(蹴る)」

 

ケビ 「がはっ!!

痛いじゃないかよ、クソがぁあっ!!

(頭痛) あ゙あぁっ!!クソが!邪魔すんな!!」

 

サラ 「っ…!」

 

ケビ 「引っ込んでろ、ダニー!!まだ俺の時間だぁあ!!失せろ!!」

 

ダニ 「ケビン、そういうの、良くないよ。」

 

ケビ 「うるせぇえ!!お前は黙ってろ!!」

 

ダニ 「ケビンの時間はもうお終い。交代だ。」

 

ケビ 「覚えてろよクソダニー!!」

 

サラ 「な、何が起こったの…?」

 

ダニ 「サラ、」

 

サラ 「いやっ!近づかないでっ!」

 

ダニ 「安心してサラ。もうケビンはいない。今は僕、ダニーさ。」

 

サラ 「…っ…」

 

ダニ 「僕は君の味方だよ。君をここから出したい。」

 

サラ 「…けないで…」

 

ダニ 「え?」

 

サラ 「ふっざけないで!!」

 

ダニ 「っ?!」

 

サラ 「何が味方よ!!何がここから出すよ!!

あんたなんか私を閉じ込めた張本人じゃない!!

ダニーとかケビンとかトムとか、何言ってんの?!気持ち悪いんだよ!!

もうわけがわからない!!なんなのもう!!普通じゃないよ!!

これ全部全部おかしいよ!!狂ってるよ!!あんた狂ってるよ!!

人を檻に閉じ込めて、人格だのなんだの、一体の体に7人とかふざけないでよ!!

私が何をしたって言うのよ!!

いいかげん離してよ…

…誰か助けてよ…」

 

ダニ 「サラ。僕が君をここから出してあげる。

でも今はまだ準備ができていない。」

 

サラ 「もう無理だよ…」

 

ダニ 「無理じゃない。また明日トムに電話して。

そして29日に会う約束をして。」

 

サラ 「…それになんの意味が…」

 

ダニ 「僕は7人の中で話せる時間が一番短いんだ。

だからもう誰かと交代しなきゃ。

でも信じて。君はここから出られる。」

 

サラ 「あ、ダニー!」

 

リリ 「うわっ、あんたダニーと話してたの?

あいつには気をつけた方がいいわよ。

何考えてんのか全然わかんないのよね。」

 

サラ 「今は…」

 

リリ 「リリアンよ」

 

サラ 「そ、そう…」

 

リリ 「で、檻のドアが空いてて、あたしがあんたと檻の中にいるってことは、

ケビンのやつやらかしたのね。

あんた大丈夫?」

 

サラ 「え?」

 

リリ 「まあいいや。

じゃ、檻から出て鍵を閉めるから。いい夢を。」

 

サラ 「リリアン!」

 

リリ 「なに?」

 

サラ 「なんでわたしをここに閉じ込めるの?」

 

リリ 「知らないわね。

知りたいならドクターに聞きなさい。

ま、いつドクターが会いに来るかはわからないけど。

おやすみ。」

 

サラ 「…おやすみ。」


 

[翌朝]

 

サラ 「…んっ…」

 

チャ 「おはよう、サラ。ママがトースト用意してくれたから食べなよ。」

 

サラ 「今は、誰?」

 

チャ 「やだなー。もう僕のこと忘れちゃった?チャーリーだよ。チャーリー。」

 

サラ 「チャーリー。」

 

チャ 「そっ!ねえねえ見て!!サラのこと描いてみた!」

 

サラ 「わたしを?」

 

チャ 「そう!結構上手に描けたと思うんだけど、どーかな?」

 

サラ 「わたし、こんなに綺麗じゃないよ。」

 

チャ 「サラは綺麗だよ。見た目だけじゃなくて、中身もすごく綺麗なお姉さんだよ。

毎朝花壇にお水あげてたり、お花とおしゃべりしてたりさ!」

 

サラ 「え…なんでそれを…」

 

チャ 「他にも登校中にホームレスのおじいちゃんに焼き立てのパンをあげてたり!」

 

サラ 「…っ…!」

 

チャ 「一人で道を渡れない子供を、手を繋いで一緒に渡ってあげてたっけ?それからおばあさんの荷物を持ってあげて家まで

送ってってあげたり。反対方向なのに、笑顔で助けてさ!ほんっと、サラって綺麗な人だよね!」

 

サラ 「チャー…リー…」

 

チャ 「ん?どうしたの?」

 

サラ 「…出てって。」

 

チャ 「あれ?なんか怒らせちゃったかな?僕はサラのことたくさん褒めたつもりだったけど。」

 

サラ 「いいから出てって!!」

 

チャ 「おお、怖い。まあどうせ出てかなきゃいけないけどさ。またね、サラ。」

 

サラ 「(荒い息)はぁ…はぁ…」

 

サラM 「怖い…チャーリーの言葉を聞いて恐怖がどんどん増して行った。早くここから出なきゃ。ここにいちゃ危険だ。

ここは狂ってる。普通じゃない。怖い。早く逃げなきゃ。恐怖に駆られながら、ダニーの言葉を思い出した。わたしをここから逃してくれること。そして今日の昼頃にトムに電話をかけること。わたしはトムの電話番号を必死に打った。」


 

トム 「もしもし?」

 

サラ 「トム?」

 

トム 「あ、サラ?また連絡してくれたんだ。嬉しいな。ありがとう。」

 

サラ 「29日って、空いてる?」

 

トム 「え?29日?ちょっと待ってね。」

 

サラ 「…」

 

トム 「うん。空いてるよ。じゃあ食事はこの日にしようか。」

 

サラ 「うん。」

 

トム 「ああ楽しみだなぁ!」

 

サラ 「わたしも。」

 

トム 「あ、そうだ。この店、サラにぴったりの美味しいワインがあるんだ!」

 

サラ 「そうなんだ。」

 

トム 「いやぁ〜すごく楽しみになってきたな〜!」

 

サラ 「そうだね。」

 

トム 「じゃあまたね!」

 

サラ 「うん、じゃあまた。」

 

サラM 「電話の向こうから微かだけど聞こえた鳥のさえずり。

間違いない。この町では一箇所でしか生存していない鳥。

…わたしの近所っ!」

 

サラ 「はぁ…はぁ…なんで、トムが、わたしの近所に…」


 

ーーー


 

サラ 「ダニーはなんでわたしを助けようと思ったの?」

 

ダニ 「それがトムのためだから。」

 

サラ 「トムのためって、ダニーだってようはトムじゃん。」

 

ダニ 「そう言われたらもともこもないけど…

とにかく、作戦の話に戻るよ。あんまり時間がないんだ。」


 

サラN 「ダニーはわたしに逃げるための作戦を説明してくれた。

一日一回、最高で3分しかわたしと話せないダニーは、

29日、決行日に向けて着実と一緒に準備を進めてくれた。

そしてとうとう29日。デートの日がやってきた。」

 

ダニ 「今日だね。」

 

サラ 「うん。」

 

ダニ 「じゃあ最終確認をするよ。

朝トムが出かけるときの檻のチェックはドクターだから日中は出れない。」

 

トム 「ただいま〜。」

 

ダニ 『でもデートの用意をするためにトムは一旦帰宅する。

家に帰ってまず最初に、多分パワーナップをすると思うから、

その時を見計って僕が君の檻を解除する。』

 

サラ 「ダニー?!」

 

ダニ 『今は1分しかないから鍵だけ渡しておく。あとこれも。

手順を書いた手紙だから。

事前に読んで、確認しておいて。

中からでも鍵があったら解除できるから。じゃ!」

 

サラ 「ありがとう!」

 

ダニ 『トムがデートに行くことは他の人格も知ってるけど、誰とまでは多分知らない。

ウッキウキのトムは自分で服を用意したいと言うと思うから

他の人格も今は簡単に出てこれない。』

 

サラ 「っ!やった!空いた!」

 

トム 「ふんふふ〜ん♪」

 

ドク 「トム、今日は誰とお食事をするのですか?」

 

トム 「あれ?言ってなかったっけ?サラだよ。サラ。」

 

ドク 「っ?!トム、少しだけ交代してください。」

 

トム 「え?なんで?」

 

ドク 「いいからっ!!」

 

トム 「あ、うん、わかった。」

 

ドクM 「サラと食事だと?!どう言うことだ!!」

 

ドク 「サラ!!…っ?!檻のドアが空いてる!!」

 

サラ 「はぁっ!!」

 

ドク 「ぐふぁっ!!」

 

サラ 「(逃げる)はぁっ、はぁっ」

 

ドク 「待てっ!!ケビン出番だ!追え!!」

 

サラ 「はぁっ、はぁっ」

 

ダニ 『檻のある部屋は地下だから、階段を走り登らなきゃいけない。

登り切ったら壁があるけど、右側を全体重かけて押せばカラクリ扉みたいに開くから。』

 

サラ 「っしょっ!!」

 

(ダニー『』の間もサラは逃げてください)

 

ダニ 『そこを出た先にはリビングがある。

多分出てすぐ衝撃を受けると思うけど、そこで立ち止まっちゃダメ。』

 

サラ 「なに、これ…」

 

ダニ 『サラの肖像画が大きく飾られてるから。』

 

サラ 「(吐き気)うっぐ…」

 

ケビ 「サーラーちゃーん!!あーそびーましょー!!」

 

サラ 「ひっ!!!行かなきゃ!!」

 

ダニ 『左に曲がったら廊下に出ると思うから、そこをただただ沿って行って。』

 

サラ 「なにこの廊下…これ、全部、わたし…?」

 

ケビ 「追いついちゃったよ、サーラーちゃーん!!」

 

サラ 「うそっ?!もうっ?!」

 

ダニ 『廊下の突き当たりで玄関があるから。ただこの廊下、ほんっとうに長いんだよね。』

 

サラ 「こんなの、長すぎるでしょ!!」

 

ケビ 「あっれえ?サラちゃん速度落ちてるよ?

もう疲れちまったんじゃねえか?

俺様が名一杯遊んでやるよっ!!」

 

サラ 「いやっ、来ないでっ!!」

 

ケビ 「ほ〜ら、捕まえた!!」

 

サラ 「いやだ!!いやっ!!離せ!!離せよ!」

 

ケビ 「堂々。捕まえたぜ、ドクター。こいつどうするよ?」

 

ドク 「檻に戻す。今トムには会わせられない。」

 

ケビ 「了解。だとよ。お家へおかえりだ、メス犬’ちゃん!」

 

サラ 「(噛む)

 

ケビ 「いっ、てぇ!!なにしやがるクソアマ!!!

あ、こら!!待て!!」

 

サラ 「(逃げる)

はぁ、はぁ!あっ!!あった!!

玄関!!っ!!

はぁっ、はぁっ!

これで、たすか−…」

 

ダニ 『でも外へ出たからって安心するのはまだ早い。

トムの家は山奥にある豪邸だ。

一歩外に出ても、町に出るには山道を通り抜けなければならない。』

 

サラ 「(腰抜かす)う…そ…もう、無理…」

 

トム 「あれ?サラ?なんでこんなところにいるの?しゃがみ込んじゃって。」

 

サラ 「ふぇっ…ぁ…ぁ…あ、いや、来ないで…近寄らないで…」

 

トム 「顔色悪いけど、大丈夫?」

 

サラ 「ぁ…ぁ…」

 

トム 「もしかして、僕のこと迎えに山道歩いてきたの?!

そんなことしなくてもよかったのに!!」

 

サラ 「…違う…」

 

トム 「でも、嬉しいな。サラともう会えるなんて。」

 

サラ 「…違う…わたしは、逃げたくて…」

 

トム 「そっかそっか。サラ、そんなに僕に会いたかったんだね。」

 

サラ 「…違う…」

 

トム 「ねえ、どうしてそんなに遠ざかってくのさ?

僕に会いたかったんでしょう?

いつも僕に素敵な笑顔を見せてくれてたじゃん。」

 

サラ 「…っ!」

 

トム 「ねえ!!またその素敵な笑顔を見せてよ!!いつも撮ってたその笑顔を!!」

 

サラ 「…いやっ…来ないで…来るな!!このストーカー!!!」

 

トム 「…ストーカー?…

やだなぁ。

僕はストーカーなんかじゃない。

君を、サラを心から愛す、サラの為だけに生きてる、

世界で一番サラのことを大切に思ってる人だよ。」

 

サラ 「…」

 

トム 「でもあのパーティーで会ったのは本当に偶然なんだ。

僕も呼ばれてたしね。

だからこの偶然は運命だと思ったよ!確信したんだ!!

やっぱり僕とサラは運命だってことを!!」

 

サラ 「…うるさい…」

 

トム 「ねえ、サラ。サラも僕のことが好きだよね?」

 

サラ 「…好きじゃない…嫌い…大っ嫌い…」

 

トム 「え、」

 

サラ 「気持ち悪いんだよ!!怖いんだよ!!もう無理!!もうやだ!!

トム、あんた狂ってるよ!!多重人格とか、檻とか、いろいろと狂いすぎだよ!!

もうやってらんないよ!!早くお家に帰りたいよ!!!帰らせてよ!!

お願いだから…もう…わたしのこと忘れてよ…」

 

トム 「なんでそんなこと言うの?」

 

サラ 「お願いだからさ…」

 

トム 「は?え?ごめん、理解ができないんだけど。

サラのことを忘れろ?そんなことできるわけないじゃん。

僕はサラを愛してるんだ。だからサラも僕のことを愛すのが普通だろ。」

 

サラ 「だからトムは普通じゃないんだって…」

 

トム 「僕のことを見捨てるの?」

 

サラ 「え、」

 

トム 「こんなに愛してるのに、サラも僕のことを見捨てるんだ。」

 

サラ 「ちょっ…トム…手に持ってるもの、なに?ねえ、怖いよ!いやっ、来ないで!!」

 

トム 「サラ、愛してるよ。」

 

サラ 「がはっ!!」

 

トム 「あーあ、ダニー、今回もダメだったよ。」

 

ダニ 「そうだね、トム。」

 

サラ 「ダ…二…ぃ…」

 

ダニ 「楽しい脱出ゲームだったよ、サラ。ありがとう。」

 

サラ 「ど…ゅ…こ…ぐぁっ!(死んだ)」

 

トム 「ありがとう、サラ。ママ、片付けお願い。」

 

ママ 「もう〜、またバニー死んじゃったの?この子の上にはどんな花が咲くかしらね。」

 

トム 「きっと綺麗な花だよ。」

 

ママ 「そうねぇ〜。次はもっと長生きしてくれるバニーがいいわね。」

 


 

トム「あの、一杯一緒にどうですか?」



 

【終】

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